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昭和47年(1972)は、わが国の鉄道史において、100年の佳節にあたる。明治5年(1872)10月14日に、
東京・新橋駅から横浜駅間(29キロ)が開通した。わずかな距離だが、汐留から品川間の海面の埋め立て、
六郷川の橋の敷設、神奈川台の山の切り取り、桜木町周辺の海面の埋め立てなどの大工事は艱難辛苦
であった。乗合馬車や人力車の業者、街道沿線の旅籠や地主らは鉄道建設を反対した。急先鋒は兵部省
を牛耳る薩摩士族は「莫大な金を鉄道にかけず、すべて軍費にまわすべき」と主張し騒然となった。しかし、
工部省を統括していた大隈重信が鉄道工事を断行した。そして、遂に一号機関車(150形)を、英国から一
両買い求め、鉄道開通にこぎつけた。この日から日本の鉄道の大いなる旅路が始まった・・・。
このLP発売のキッカケとなった、テレビドラマの『大いなる旅路』は、鉄道百年の年の4月放送が開始され
て、SLファンのみならずお茶の間の人気を博した。番組主題歌を、味わい深く熱唱したのが、当時、銀行
マン(第一勧業銀行)で前年歌手デビューをした小椋佳である。この曲で彼は、同年の「ポリドールレコード
・ヒット賞」を受賞した。このドラマは、明治から昭和三代の鉄道員がおのが信ずる道を生き抜く。家族もそ
れをあたたかく応援する感動作であった。クライマックスは、鉄道一家の三代目久保田雄介(青年期・河原
崎長一郎~中年期・神山繁~壮老期・進藤英太郎)が、鉄道100年の前年の昭和46年に、愛車のC62・
2号車ともに引退するシーン。第1回のオンエアは、鉄道百年の4月2日(日)で、最終29回は、同記念式
典当日の10月15日(日)に迎えるように編制を組んだ用意周到さが光った。
【記念LPの楽屋裏噺】
さて、今回出品したLPは、昭和47年(1972)6月に、ポリドールから発売された鉄道百年記念『大いなる
旅路/栄光の蒸気機関車C622』(定価1700円)で、当時のLP値段からは数百円も高かった。中学生
の私は、お年玉貯金を切り崩して、清水どころか万里の長城から飛び下りる覚悟で購入した。普通郵便の
切手が一枚15円(現在84円)だった。現在に換算するといかに高いか想像できよう。レコード屋のオヤジ
はこう説明した。
「ドキュメンタリー仕立てにして、制作費がはんぱなくかかったそうだ。大量の機材と人員を北海道へ連れ
て、さらにナレーションやら、オーケストラまで動員したんだ。東京のスタジオ録音とはちがう・・・」
そうそう、レコード・ジャッケットも凝っている。そのために、シングルカットされた小椋佳のEP『大いなる
旅路』はヒットしたが、このLPは初版プレスの出荷のみで売れずに廃盤となった。その分、今や稀少価値
があるし、2年後(2022)は鉄道開設150年を迎えるので付加価値が高まるかも!?
【レコード紹介】
このLPは、SL(蒸気機関車)感動を知る者や興味ある方には、えも言われぬほのぼのとした感動を呼
び醒ます。出版駅での威風堂々としたSL、ああ発車直前のSL、急勾配の峠を全力をで賭け登るSL、
平原を余裕で疾走するSL、駅に到着して車体を休めるSLなどなど、生録が随所に収録されている。C62
・2号車が走行したのは、旧国鉄の函館本線の倶知安駅から小樽駅間である。この臨場感を音のみで再
現するために、ポリドールでは、特別チームを結成して、北海道に派遣し各種SL音源や記録写真を随所
で収録した。大衆向けのビデオをもとより、CDやDVDも発売されていなかった、鉄道百年時の精一杯の
挑戦であった・・・。
このLPは、小椋佳の人気ドラマ主題歌「大いなる旅路」と「この胸の高なりを」「この胸の高なりを」の歌2
曲が、A面(SIDE1)とB面(SIDE2)のそれぞれに一曲ずつ挿入されていにる。実にコンパクトにまとめた
「C62」や「函館本線」の解説、ナレーションは実に秀逸である。地図を広げどのへんを走っているのかを
想像すると楽しい! 本編に邪魔にならない程度の、ポリドール・オーケストラのバック演奏もまた脳をやさ
しく刺激させる見事な演出だ。つくづく製作にお金をかけたLPである。
【SIDE 1 】
1、「この胸の高鳴りを」作詞作曲・小椋佳/編曲・青木望
SL録音① 倶知安駅構内にて録音。
SL録音② 倶知安峠にて定点録音。
2、倶知安~小沢 「朝もやのC62ー2」
SL録音③ 倶知安~小沢間、テンダー後方に録音。
3、小沢~銀山 「山間のC62ー2」
SL録音④ 倶知安~銀山間、テンダー後方に録音。
【SIDE 2 】
1、仁木~余市~蘭島 「走れC62ー2」
SL録音⑤ 仁木~余市~蘭島間のテンダー後方に録音。
2、塩谷~小樽 「消えゆくC62ー2」
3、「大いなる旅路」作詞・小椋佳/作曲・渡辺岳夫/編曲・小野崎孝輔
SL録音⑥ 小樽駅構内にて録音。
【ジャケットの見開き構成】
ジャケットを開くと、コマ撮り含めSL写真10点、C62の精密画と機関車設計図、SL録音を解説したイラ
スト4点、「函館本線について」「C62型式について」「C62・2号車の経歴について」の解説文計3本が、
よくまとまったデザインで構成(レイアウト)されている。
【製作スタッフ・協力者、他】
33回転・12インチ盤(LP)
歌 小椋 佳
ナレーション 金内喜久夫
構成・文 馬場 節・田中 裕
音 楽 渡辺岳夫
演 奏 ポリドール・オーケストラ
ディレクター 多賀英典
録 音 大野進・杉田信雄
デザイン 廣野展生
写 真 水谷 功
協 力 バリアンツ・プロダクション
レコード番号 MR3206
発売・昭和47年6月12日
※下記の方々の御協力に深く感謝致します。
渡辺要・高谷敏雄・野村澄之助・三田正光・常磐雅弘
【C62ー2解説】
C62・2号機関車は、昭和22年(1947)に製造、東海道本線、山陽本線、常磐線、そして函館本線、転々
と配属されてきた。函館本線をC62が走ったのは、昭和32年から同47年(1972)までの15年間である。
急行「ニセコ」は、C62ー3との重連運行もしてSLファンを楽しませた。 C62は、わが国最大の高速対応
の最新蒸気機関車である。C59の台車部にD52のボイラーを載せた仕様だ。昭和25年には、東海道本
線で「特急つばめ」として、東京~大阪間を8時間という驚異的な時間で走行した。それ以前は13時間要
したのを、C62は5時間も短縮したのだ。昭和29年、いくつかの改良を重ねて、東海道本線の木曽川橋
梁でに時速129キロ、蒸気機関車で国内最高速度を記録した。
だが、時の趨勢は早く、やがて蒸気機関車からディーゼルの時代が到来。C62は花形路線から、徐々
に地方へと移転するのであった。そして運命の日、昭和47年6月18日にC62ー2は現役を引退した。
このLPレコードが発売した直後である。同年8月に、C62ー2は、京都の梅小路機関区で動態保存され
た。その後、梅小路機関区は京都鉄道博物館に改装され、C62ー2は、トロッコ列車を牽くSL「スチーム
号」として構内に展示されている。私もかつて乗車したが実に楽しい!
【状態・レコード再生チェック済・良好!】
他のレコードを含め、音質を確かめるために、この春、CDとレコード、カッセットが聞けるオーディーオを
購入した。なにぶん48年前のレコードなので、無責任な出品はしたくない。見た目も傷はなく、レコードの
溝もしっかりしいる。自分の部屋に飾り、長年大切に保管していたのでジャケットも大きな劣化はなく、経年
の感程度である。購入時は何度も聴いたが、カセットテレコが発売され購入後は、カセットテープにダビン
グして、レコード本体大切に部屋に飾っていた。久しぶりに針を落とし聴いたがすこぶる「良好」である。
付録ポスターは、長年部屋に飾っていたが、中学時代から今日まで、この間6度引越しをした際に、多少
痛んでいたので価値のわからぬ家族に捨てられた。ですので今はナシで、まことに申し訳けない!
【鉄道開通100年当時の鉄道記念切符】(1972年=昭和47年を中心に!)
【1】「第8回大沼雪と氷の祭典記念」函館~大沼公園240円
昭和47・1・20日刻印ハサミ入り。
※新幹線・弘前城・青函トンネル・国鉄提供雪像のイラストをバックに風景写真がある。当時は東北新幹
線は開通しておらず、この前年に同線構想がやっと承認された。この鉄道券には将来の夢が託されてい
る。ちなみに、大宮駅~盛岡駅間開業は同57年で、東京駅から新青森駅が開通したのは平成22年であ
る。そして同28年3月以降北海道新幹線との直通運転が実施された。この夢が実現するのに45年もの
歳月がかかった・・・・。
【2】「北海道鉄道開通90年〈大沼号〉」ご乗車記念カード(青函船舶鉄道管理局)1970・11・3日発行
※D型の初期SLと大沼の絵、同型最終機「D52ー468」が驀進する写真。裏には快速大沼号の歴史
ウンチクが披露。
【3】鉄道100年「SL運転記念乗車券」水戸行き240円(水戸鉄道管理局発行)昭和47・9・23日刻印
ハサミ入り。※形式D51・8635の写真(表)「水戸線のあゆみ」(裏)。
【4】鉄道100年「幻のキマロキ運転記念急行券」小出から100㌔100円(新潟鉄道管理局)昭和47・3
・4日ハサミ入り。
※SLマックレー車・ロータリー車・既成SLの編成が、両脇3メートルの雪をくり抜いた本線を驀進。先頭
車の雄姿が写真掲載。また、当時の「ディスカバー・ジャパン」キャンペーンのロゴ入り。裏面にはキマロ
キ編成の説明文がある。
【5~15】鉄道100年「高崎線開通88周年急行券」計10枚
1、急行券・前橋から100㌔・100円(高崎鉄道管理局)昭和47・7・1日刻印ハサミ入り。※表は善光
号(1290型)の絵で裏はその説明文。
2、急行券・前橋から100㌔・100円(同鉄道管理局)昭和47・7・1日刻印ハサミ入り。※表は明治大
正期に活躍したB6型の絵で、裏はその説明文。
3、急行券・前橋から100㌔・100円(同鉄道管理局)昭和47・8・1日刻印ハサミ入り。※表は明治中
期の600型式の絵で、裏はその説明文。
4、急行券・前橋から200㌔以内・200円(同鉄道管理局発行)昭和47・8・1日刻印ハサミ入り。※表
は明治大正期に活躍したB6型の絵で裏はその説明文。
5、急行券・前橋から100㌔・100円(同鉄道管理局)昭和47・9・1日刻印ハサミ入り。※表は明治の
主役5500型式の絵で裏はその説明文。
6、急行券・前橋から200㌔・200円(同鉄道管理局)昭和47・8・1日刻印ハサミ入り。※表は明治の
主役5500型式の絵で裏はその説明文。
7、急行券・前橋から200㌔・200円(同鉄道管理局)昭和47・10・1日刻印ハサミ入り。※表は明治
後期の旅客車花形7450型式の絵で裏はその説明文。
8、急行券・前橋から100㌔・100円(同鉄道管理局)昭和47・11・1日刻印ハサミ入り。※表は昭和
初期の華C51の絵で裏はその説明文。
9、急行券・前橋から200㌔・200円(同鉄道管理局)昭和47・11・1日刻印ハサミ入り。※表は高崎
線の最後を飾ったC57の絵で裏はその説明文。
10、急行券・前橋から100㌔・100円(同鉄道管理局)昭和47・12・1日刻印ハサミ入り。※わが国SL
界の王者、1000台を超える最多生産台数D51雄姿の絵、裏はその説明文。
11、急行券・前橋から200㌔・200円(同鉄道管理局)昭和47・12・1日刻印ハサミ入り。※表は国鉄
史上最強のD5257の絵で裏はその説明文。
【16】鉄道100年「房総一周電化開通入場券」東京電環ゆき240円(千葉鉄道管理局発行)昭和47・
7・15日刻印ハサミ入り。※表は特急電車と快速電車の写真で、裏はその経緯の説明文。
【17】鉄道100年「羽越本線・白新線電化開通」大館駅30円(同駅発行)昭和47・10・2日の刻印。
※表は庄内・秋田・津軽などの郷土民芸写真で、裏は「御殿まり」「いずめこ人形」「竿灯」「お杉わら
べ」「弘前の扇ねぶた」「津軽凧」の説明文。
【18】鉄道100年「47・3 ダイヤ改正 東北を走る特急増発記念入場券」郡山駅30円(同駅発行)
昭和47・3・15日刻印。「はつかり」「つばさ」「ひばり」「やまびこ」「はくつる」「ゆうづる」「やまばと」
「あいづ」「あおば」「みちのく」の説明文。
【19】鉄道100年「(昭和)45・4・5オープン 上野駅旅行センター」駅入場券。※表は懐かしい当
時の上野駅(昭和7年創設時)の写真で、裏はその説明文。以上、送料は当方が負担いたします。
★なお、当時のSL小僧は、「19」の番号はSLを見に「行く」で縁起のよい番号でした。おあとがよ
ろしいようで・・・・。